実は私も、星の数は多ければ多いほどいいと勘違いしてました。実際にミシュランを買ってみると、その12ページに「星つきレストラン」という項目があり、ここを読んでみて、そうではないということに気づいたのですが、ネットをはじめいろんなところを見ているうちに、まだ誤解したままの人が結構いるようなので、ちょっと日記のネタにしてみようと思いました。
まずは、該当部分の全文を引用してみます。
「ミシュランガイド東京」の全てのレストランには、それぞれ1つ星、2つ星、3つ星が与えられ、私たちが特に美味しい料理を提供するレストランとして紹介しています。星の格付けには、いくつかの明確な判断基準があります。素材の鮮度と品質、調理技術の高さ、オリジナリティー、コストパフォーマンス、そして常にクオリティーを保つ料理全体の一貫性、最後に味付けの完成度です。ミシュラン調査員が料理の質と一貫性を確かめるために、必要と判断すれば何度でもレストランを訪れるのはそのためなのです。また、2つ星、3つ星の料理は、1つ星にはない何か特別なものを提供していなければなりません。3つ星は、ミシュラン格付けの最高峰にあたり、まさに卓越した料理に贈られます。レストランのスタイルや国籍がどんなものであれ、星は料理そのものに与えられる評価です。すなわち、店の雰囲気、サービス、快適さは、星の判断基準には含まれていません。
ここには、そもそも星が与えられるための規準が詳しく書かれています。素材の鮮度と品質、調理技術の高さ、オリジナリティー、コストパフォーマンス、料理全体の一貫性、味付けの完成度を基準に判断して、レストランで提供される料理そのものを評価し、特に美味しい料理を提供するレストランとして紹介しているのが星つきレストランだ、というわけです。しかし、星が与えられるか否かについてはそうやって判断されると書かれていますが、星の数については、それを増やすためには「何か特別なもの」を提供していなければならない、と書かれているだけです。
では、その「何か特別なもの」とは何でしょうか? そのすぐあとのページに、具体的な店名とあわせて、ちゃんと明記されていました。
3つ星=「そのために旅行する価値がある卓越した料理」
2つ星=「遠回りしてでも訪れる価値がある素晴らしい料理」
1つ星=「そのカテゴリーで特に美味しい料理」
つまり、料理そのものの評価は星の有無だけで全て終わっていて、それ以上の星は、その料理が旅行の目玉としてどの程度使い物になるか、という評価をしているわけです!
実際、ミシュランの特集番組などの取材を通じて明らかにされた調査方法がそのことを裏付けています。匿名調査員が料理を実食して、「星が与えられる」と判断した場合に初めてミシュラン側から店に取材を申し込み、撮影までそこで済まされるのですが、いくつの星が与えられるかはその時点でもまだ決まってなくて、店側にはあとで電話で星の数が通知される、という手順で行われていたというのです。つまり、星の数を決める段階では、料理の質云々の細かい上下関係はどうでもよく、その素晴らしい料理が旅行素材としてどの程度使い勝手がいいものなのかが最重要なのです。
具体的に考えてみましょう。東京にもパリの3つ星レストラン直伝の味を提供している店は多いのですが、それらの店は今回、必ずしも全て3つ星を取ったわけではありませんね?同じ味を提供しているのに何故なのか…。3つ星=「そのために旅行する価値がある卓越した料理」で、2つ星=「遠回りしてでも訪れる価値がある素晴らしい料理」ということであれば話は簡単です。例えばアメリカ人がアラン・デュカスの料理を食べるためにちょっと旅行をしようと思い立ったとき、一体どこの変わり者が、パリではなくわざわざ東京のベージュ=アラン・デュカス東京に予約を入れるでしょうか? 例えばイギリス人が香港あたりに旅行して、旅行ついでにどこかに寄り道してピエール・ガニェールの料理を食べようと思ったとき、一体どこの変わり者が、パリに寄らずにわざわざ東京のピエール・ガニェール・ア・東京に立ち寄るでしょうか? これらの料理がパリと全く同じ品質を保っているという前提で考えたとしても、星は1つだというのが論理的帰結なのです。
ミシュランは本の中でそのことを正直にちゃんと書いているのですが、困ったことに、どうも日本人の悪い癖で、ろくに読まずにイメージだけで勝手に解釈して、星の数が納得できん等と騒ぐ人が多いようです。たとえばこちらには、評論家たち全員がピエール・ガニェール・ア・東京を3つ星確実と事前予測していました。結果は星2つだったのですが、既に書いたように本来、この種類の店の場合には星は1つだけだというのが論理的帰結なのですから、星2つというのは実はすごい大健闘。本家フランスの3つ星レストランであるピエール・ガニェールに劣るわけでは決してなく、むしろ「本家を超えている」という評価がこの星2つなのです。
今回、初の東京版では掲載店舗150軒に対して、ミシュラン過去最高の合計191の星がつけられた、等と騒がれています。97の星がつけられたパリ版の約2倍、54の星がつけられたニューヨーク版の3倍以上という快挙だ、などと報じているところもありますが、10店もの3つ星店が星の数を大量に稼いでいるパリなんかとは星の意味が違うのであって、実は、2~3倍どころでは済まないとてつもない評価を貰ったのが真相なのです。そのあたりのことを、ちゃんと理解できてる人は果たしてどのくらいいるのか、疑問なところです。
ちなみに今回、東京版とはいいつつ23区中わずか9区からしかレストランが選ばれてないわけですが、ミシュランガイドというものの書籍としての販売実績などから考えて、それほど予算がかけられるわけでもないことから考えてやむをえないのではないかとyohsは思います。ただ、今回の東京版の売り上げ好調なおかげで恐らくは予算も余裕ができたことかと思います。次に東京を調べるときにはちゃんと23区全部回って、もっと多くの店を取り上げてほしいものだと思います。その暁には、星の数がはたしてどのくらいになるものなのか、期待と同時に空恐ろしい気がします…
コメント (1)
あ。書こうと思って忘れてたことがもう1つあったけどめんどうなのでレスで済ませますね。
東京でさえこれだけのとてつもない評価を戴いているミシュランですが、このことを忘れてはいけません。
日本においては、食の都といえば大阪だ、ということを。
投稿者: yohs | 2007年12月02日 12:53
日時: 2007年12月02日 12:53